「遺体の脳を熟慮する演出家の脳は遺体の脳ほど有能か?、ということを考えながら」

「脳が生み出す言語の不思議」
「遺伝子を道具として脳を見る 〜 いかにして硬い遺伝子が柔らかい脳をつくるのか」

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演題名
「脳が生み出す言語の不思議」
   
講演要旨
 ダーウィンは、『人間の由来、および性に関する選択』(1871年)の中で、「人間は話すという本能的傾向がある」と述べています。言語は日常生活で空気のように身近にあるため、かえってその特性やメカニズムが見えにくくなっています。言語の基本的な特性を明らかにするアプローチが言語学です。こうした言語の特性(特に再帰的計算)は数学や音楽にも見られ、人間の知的活動や芸術的活動を支えていることが分かります。言語は人間に固有の高次脳機能であり、言語を生み出すメカニズムを明らかにするのが脳科学です。
 私たちは、fMRI(機能的磁気共鳴映像法)などの手法を用いて、文法処理の時に普遍的に働く中枢(文法中枢)が左脳の前頭葉にあることを突き止めました。また、この文法中枢の他にも、文章理解に必要とされる中枢として左前頭葉の一部が特化していることを明らかにして、言語の普遍性を日本語・英語・日本手話のように異なる言語間で確かめました。さらに、母語で使われている言語中枢と、第二言語の習得時に必要とされる領域との共通性が明らかになってきました。講演では、最新の脳の「言語地図」(図参照)を紹介しながら、脳が生み出す言語の不思議について考えてみましょう。
 
講師略歴

酒井 邦嘉(東京大学大学院総合文化研究科 准教授)
 
1992年 東京大学 大学院理学系研究科 博士課程修了 理学博士
1992年 東京大学 医学部 第一生理学教室 助手
1995年 ハーバード大学 医学部 リサーチフェロー
1996年 マサチューセッツ工科大学 客員研究員
1997年 東京大学 大学院総合文化研究科 助教授
2002年 第56回毎日出版文化賞
2005年 第19回塚原仲晃記念賞
2007年 東京大学 大学院総合文化研究科 准教授
研究分野: 言語脳科学および脳機能イメージング
著書:『言語の脳科学』『科学者という仕事』『遺伝子・脳・言語』(中公新書)など
研究室URL:http://mind.c.u-tokyo.ac.jp/index-j.html
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